酒のうまそうな雰囲気の飲み屋を見つけて入る。
客は他におらず、カウンターに座り酒とつまみを頼む。
カウンター越しに親父に、ちょろちょろと話かけたが話が弾まない。
こちらの人はシャイなのか?それともオレがきらわれているのか?
突然の一見さんだったので、原発関係者と思われた可能性はある。
そのうち、常連の客が一人二人と入って来てオレの横のカウンターに陣取った。
親父と常連さんたちとの話は弾んでいた。
内容的には、「あんたのところは補償金がいくらもらえる、もらえない」というようなリアル福島な会話だったが。。。
しばらく聞き耳をたてながら飲んでいたが、話にも加われず、腹も満たされたので出ることにした。

その店で飲んだ福島の地酒「飛露喜(ひろき)」はなかなかウマかった。
店を出たは良いが、ちょっと飲み足りないし話足りない。
そこで、その辺のスナックでもと探してみると、1軒のフィリピンパブが目に入った。
店先に「90分飲み放題5,000円」と、わかりやすく提示されていたところが気に入って入ることにした。
店に入ると1人のフィリピーナのおっさんが寄って来て、「あなた、初めてですか?ホントに?英語話せるよね?」と矢継ぎ早に聞いてくる。
オレが「初めてだよ。First time. 英語は少しは話せるけど。」と言うと、以後の会話は8割が英語となった。
おっさんが言うには、先月にオレとそっくりの客がこの店に飲みに来たらしく、その人は英語も話せたらしい。
だからしつこく、「初めてか?」とか、「英語話せるよね?」という質問になったらしいのだ。
世の中には自分とそっくりな人間が3人いると言うが、そんなにそっくりなら一度合ってみたいものである。
おっさんは、一人のホステスを呼んでオレにつけ、自分も横に座り3人での会話となった。
この時点でこの店の客はオレ一人。
このおっさん、実はこの店の「ママ」なのだそうだ。(@_@)
で、このママ(おっさん)の話が実に面白い。
といっても、内容的には別に大したことではなく、
「この日、東京でも雪が降って期待していたのに、浜通りでは全然雪が降らなかった」とか、
(福島は東北だが、浜通りでは雪が年に2,3回しか降らないので珍しいらしい。)
「震災のときは津波で1階がほぼ水につかって大変だった」とか、
「フィリピンを旅するなら、どこが良い」とか「危ない」とか、
そんな話なんだけど、話の振り方もうまく、こちらを飽きさせない。
そのうち、別の客もちらほらと現れた。
そうするとママは、別の客のところに行き話しを盛り上げ、しばらくするとまた別の客、そしてまたオレのところに戻ってきて、話の盛り上げるのだ。
単純にホステスをあてがうだけでなく、自分で話を盛り上げて回るところがなかなか職人芸である。
オレについたホステスの子が言うには、このママ、もう20年もここで店をやっていて、名物なのだという。
で、実はフィリピンに奥さんが居て、毎晩yahooメッセンジャーでテレビ電話をするほどの愛妻家らしい。
陽気に楽しませてくれる中で、地震があって津波があって原発問題があってもなおこの地に留まって、家族のために働いているであろう彼の姿に、少なからず尊敬の念を抱いたのであった。

ママとホステス
今年は海外に旅立つことはできなかったのだが、福島でちょっとだけ東南アジアの雰囲気を味わうことができた。
これもまた楽し。
(つづく)
